SDGsをファッション業界で実践するには?企業がおさえるべき課題と対策
近年、「サステナブル」「エシカル」「スローファッション」といった考え方が広まりを見せています。これらはSDGsの達成に深く関わり、ファッション業界にとっても避けて通れない課題です。しかし、実際にSDGsに取り組むとなると、「何から始めればいいのか分からない」と悩む企業も少なくありません。
今回は、ファッション業界が抱える環境・人権に関する課題と、SDGsの具体的な目標との関係を整理し、すでに取り組みを進める企業の事例をご紹介します。
取り組みのヒントを得ると、自社でも持続可能な循環型ビジネスモデルを構築するきっかけになるでしょう。
目次
おしゃれの裏にある現実|SDGsとファッション業界の問題

ファッション業界は、持続可能な産業へと早急に転換する必要があります。華やかな業界の裏側には、環境負荷や人権問題といった深刻な課題が存在するのです。まずは、SDGsとファッション業界の関係性や課題について理解を深めましょう。
SDGsとは?ファッションとの関係性
SDGs(Sustainable Development Goals)は、「持続可能な開発目標」という意味で、世界中の人々が2030年までに達成を目指す17の目標です。
近年、ファッション業界は、大量生産・大量消費・大量廃棄による環境問題や労働環境・人権問題など深刻な課題を抱えており、これらの解決に向けた取り組みが要請されています。
SDGsには、環境保護や人権に関連する目標が多く含まれており、ファッション業界はその達成に大きな役割を果たす存在です。
ファッションの裏側にある環境負荷
衣類産業では、原料調達から生産・廃棄に至るすべての過程で、以下のような様々な環境負荷が発生しています。
・環境汚染と資源の大量消費
衣類産業全体で、毎年930億立方メートル(500万人分相当)の水を使用、航空業界と海運業界の合計より多い12億トンの温室効果ガスを排出しています。繊維の染色や処理過程で発生する排水は、世界の工業用水汚染の20%にも及びます。さらに、合成繊維でできた衣類の洗濯により、毎年約50万トンのマイクロファイバーが海洋に放出されているのです。
・衣類の大量廃棄
我が国で年間に供給される衣類は81.9万トン。しかし、そのうちの78.7万トンが1年以内に手放されるといった現状があります。手放された衣類の85%が焼却や埋立処分され、二酸化炭素の排出や、土壌汚染といった問題を引き起こしています。
大量生産の背景に潜む労働問題
ファッション業界では、先進国がコストカットのために、途上国の安価な労働力に依存している現状があります。企業が利益を優先して効率化を進める結果、労働者が低賃金・長時間労働や、劣悪な環境で働かざるを得ない状況が生じています。
2013年、バングラデシュの縫製工場が入った「ラナ・プラザ」の倒壊事故により、死者1,134人、負傷者2,500人以上と多くの犠牲者が出ました。建物倒壊の危険を指摘されながらも営業を停止せず、そこで働く人たちが労働を強いられた結果、引き起こされた事故なのです。
この事故を受け、ファッション業界全体の倫理的な生産体制の構築や透明性の向上が求められるようになりました。
参考:消費者庁『ファッションと環境』
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SDGsの目標から見るファッション業界が取り組むべき課題

SDGsの目標の中で、ファッション業界に関わる課題は複数あります。その中で重点的に取り組むべき課題3つに焦点をあてました。それぞれの課題解決に向け、必要な取り組みを解説します。
循環型モデルの実現へ「つくる責任 つかう責任」
現在の大量生産・大量消費型のモデルから、適量生産・循環利用を重視するモデルへと転換していく必要があります。
目標達成に向けた具体的な取り組みは次のとおりです。
・環境に優しい素材の選択
・適切な方法で適量を生産
・3R(リデュース・リユース・リサイクル)の推進
生産から廃棄に至るまで、環境への影響を考慮した製品づくりが求められます。
フェアトレードの推進「人や国の不平等をなくそう」
フェアトレードを推進し、労働者の人権を守る取り組みが必要です。フェアトレードとは、発展途上国の生産者が適正な価格や安全な労働環境で衣類や原料の取引をし、生産者の生活や権利を守る仕組みです。
企業が利益を優先するあまり、途上国の労働者が基本的人権を侵害されるようなことがあってはなりません。労働に見合った賃金の支払いや安全な労働環境の確保など公正な取引を通じて、双方が豊かになる取り組みが必要です。
CO2排出を抑える「気候変動に具体的な対策を」
衣類産業では、原料の調達から製造、廃棄までの全工程で大量の二酸化炭素を排出します。二酸化炭素の排出量増加は、地球温暖化の要因であるため、適量生産やオーガニック原料の活用、リサイクル素材の導入が急務です。
素材の選択から供給管理、廃棄処理に至るまで、企業は環境負荷最小化に向けた努力が求められます。
【SDGs】ファッションブランド・企業の取り組み事例から学ぼう

環境負荷や労働問題への危機感から、SDGsに取り組むファッションブランドが増えています。ここでは、ユニクロやパタゴニアなど企業の事例を通じて、SDGsを推進する具体的な手法をご紹介します。これらの実践例は、自社の持続可能な取り組みの参考になるでしょう。
ユニクロ|全商品リサイクル・リユースの推進
ユニクロでは、不要になった服の回収ボックスを各店舗に設置しています。
回収された服は、リユースできるもの・リサイクルされるものに分類。リユースできるものは、支援物資や再販商品として再利用され、リユースに適さないものは、リサイクル素材として処理されます。例えば、回収したダウンジャケットから、ダウンとフェザーは新しい衣類の原料として再利用されます。
また、ペットボトルが原料の「リサイクルポリエステル」を使用した製品を展開するなど、循環利用や再利用に積極的に取り組む企業です。
参考:UNIQLO「あなたのユニクロ、次に生かそう。」
パタゴニア|徹底した環境配慮型ビジネスモデル
パタゴニアは、「100%再生可能かつリサイクル原料の使用」に向けて取り組む企業です。パタゴニアで使用されるコットンはすべてオーガニック限定で、ポリエステル製品の約90%に再生ポリエステルが使用されています。
他にも、再生可能エネルギー化を進め、二酸化炭素排出量や資源の使用量削減、廃棄物削減、フェアトレードの推進にも貢献。「地球を救う」を事業目的として掲げ、環境保護や社会貢献に徹底的に取り組んでいます。
参考: Patagonia「企業の責任とパタゴニアの歩み」
シサム工房|生産者の自立支援や公正取引を重視
シサム工房は、1999年に京都で誕生したフェアトレード専門ブランドです。
本社デザイナーのデザインをもとに、インド・ネパール・フィリピンなどアジア5カ国の生産者が製品を制作。完成した製品を輸入し販売しています。適正価格かどうかだけでなく、生産者が働きがいを感じながら自立につながる仕組みづくりを大切にしています。
フェアトレードの国際ネットワークに加盟し、環境や人権、社会的責任などフェアトレード10基準を遵守した事業活動を行っています。
参考:シサム工房「フェアトレードのこと」
まとめ|SDGs達成はファッションの持続可能性につながる
近年のファッションの傾向は、大量生産・大量消費型のモデルから、適量生産・循環利用を重視するモデルへとシフトしつつあります。その背景には、環境負荷や労働問題などの深刻な課題が存在しています。
これらのSDGsに関連する課題は、ファッション業界全体の未来を左右するため、企業や消費者が共に解決すべきです。まずは生産者である企業が「つくる責任」を果たし、消費者が適切な選択肢を選べる体制整備が重要となります。
自社の強みを活かしたSDGsの取り組みは、社会的信用の向上につながるだけでなく、ファッションの持続可能性にも貢献します。