再生繊維としてのセルロースとは?特徴やメリット・洗濯方法までを徹底解説
最近、洋服のタグで「再生繊維」「セルロース」という言葉を見る機会が増えています。
なんとなく環境に良さそうなイメージはあっても、「再生繊維って何?」「セルロースの特徴は?」と聞かれると、戸惑う方も多いのではないでしょうか。
実は、再生繊維やセルロースは、私たちの身近にある繊細な素材です。正しい知識がないままだとお手入れを間違えて着心地が変わったり、洗濯に失敗してしまうかもしれません。
そこで今回は、再生繊維やセルロースとは何か、基本から解説します。再生繊維の衣類を長く楽しむため、素材への理解を深めましょう。
目次
再生繊維に使われるセルロースって?注目される理由と背景とは
衣類業界は、大量生産・大量破棄による環境への影響が懸念されています。消費者にも環境に配慮した製品選びが求められる今、再生繊維やセルロースが注目を集めている理由を知っておきましょう。
再生繊維とは?セルロースの関係も解説
再生繊維とは、天然の素材を一旦溶かして再び繊維状に加工したものです。自然由来の原料を使いながら化学処理を施して作られているため、「天然繊維」と「合成繊維」の中間的な存在として位置づけられています。
セルロースとは植物の体を支える成分であり、地球上に最も多く存在する有機化合物です。
セルロースを原料にした再生繊維は、自然由来のやさしさと機能性を兼ね備えており、人にも環境にもやさしい素材として広く支持されています。
なぜ?再生繊維が注目されている理由
近年、再生繊維が多く取り入れられるようになった背景には、主に2つの理由があります。
⑴肌にやさしい
天然素材を原料としているため、肌触りがやさしく快適な着心地。吸湿性や放湿性に優れているため、アレルギー体質や敏感肌の方、子どもにも安心です。
⑵環境にやさしい
再生可能な自然素材を原料としているため、資源の無駄遣いを抑えられます。さらに、生分解性という最終的に土に還る性質を持つため、廃棄後の環境汚染リスクが少ない点も魅力です。
再生繊維は見た目や着心地の良さに加え、環境配慮の面でも高く評価されています。
再生繊維のセルロースは主に3種類!それぞれの特徴を解説
再生繊維でセルロースを原料にしたものの中で、代表的なものといえばレーヨン、キュプラ、リヨセルの3種類です。
それぞれの特徴や違いを知っておくと、アイテム選びやお手入れの参考になります。洗濯・保管方法を知っていると、1着の服を大切にできるでしょう。
シルクを真似て作られた「レーヨン」
19世紀後半に人工シルクとして開発されたのが、レーヨンです。シルクに近い生地感を手頃な価格で楽しめるのが魅力ですが、扱いには注意したい点もあります。
| メリット | デメリット |
| ・上質な光沢感 ・高い通気性と吸湿性 ・発色が良い ・消臭性あり | ・水に弱く縮みやすい ・濡れると型崩れしやすい ・シワができやすい ・乾きにくい |
美しい見た目と高い機能性を兼ね備えた人気素材ですが、特に水濡れには注意が必要です。
なめらかで高級感のある「キュプラ」
高級感と上品さが魅力の再生繊維が、キュプラです。見た目はレーヨンと似ていますが、価格はやや高め。シルクとレーヨンの中間に位置する素材として知られています。
静電気が起きにくく摩擦に強いため、スーツやスカートの裏地などに使われることが多いのも特徴です。
| メリット | デメリット |
| ・上質な光沢感 ・美しいドレープ ・静電気が発生しにくい ・伸縮性があり快適な着心地 ・高い通気性と吸湿性 ・優れた染色性 | ・水に濡れると縮みやすい ・乾きにくい ・シワになりやすい ・型崩れしやすい |
機能性が高く着心地の良い素材ですが、水に濡れるとトラブルにつながる可能性があるため注意しましょう。
参考:UP-T「キュプラとはどんな特徴のある素材?メリットとデメリットも解説」
やわらかくシワになりにくい「リヨセル」
リヨセルは、ユーカリの木材を原料に作られる再生繊維です。商品名の「テンセル」としても知られています。
化学薬品をほとんど使わずに作られるため、環境負荷が少ないエコ素材として世界的にも注目されていますが、扱い方に注意が必要な一面もある素材です。
| メリット | デメリット |
| ・やさしい肌触り ・高い吸湿性 ・シワになりにくい ・濡れても縮みにくい ・他の再生繊維より強度がある | ・色落ちしやすい ・摩擦に弱く毛羽立ちやすい ・濡れるとかたくなる場合がある |
他の再生繊維に比べお手入れがしやすく、普段使いに適しているため人気があります。
参考:shufuse「リヨセルとは!素材の特徴とメリット・デメリットを知ろう」
再生繊維のセルロースからできた衣類の失敗しない洗濯のコツ
レーヨンやキュプラ、リヨセルなどは普段着る洋服にも多く含まれていますが、水に弱い性質を持つものも多く「洗濯はどうしたらいい?」と困る方は多いでしょう。
再生繊維の中でもセルロースを原料にした服を長くきれいに着続けるために、失敗しない洗濯のコツを解説します。
まずは洗濯表示をチェック
再生繊維のセルロースから作られた衣類は、基本的にドライクリーニングが推奨されています。しかし、最近は素材や加工技術の進化により家庭で洗えるアイテムも増えてきました。
まずは自宅で洗えるか、洋服についているタグを確認しましょう。
手洗いするなら?手順と注意点を解説
手洗いマークがあるアイテムは、自宅での手洗いが可能です。以下の手順を守れば、生地へのダメージを抑えながらきれいに洗えます。
⑴30度以下のぬるま湯を入れた、洗い用とすすぎ用の桶を準備
⑵中性洗剤やおしゃれ着用洗剤を入れて、やさしく押し洗い
⑶服をすすぎ用の桶に移し、洗剤が残らないよう水を変えながらすすぐ
⑷タオルに挟んで水気をふき取る
⑸形を整えて平干し
お湯に浸けると縮む可能性があるため、水温は30度以下を守りましょう。
また、水に長く浸けておくと生地が傷みやすくなります。生地への負担を軽くするため、洗濯はできるだけ短時間で終えることが重要です。
洗濯機で洗うなら?安全に洗うポイント
洗濯機OKのアイテムでも、通常の洗い方だと型崩れや縮みを引き起こす場合があります。やさしく洗えるよう、以下のポイントを押さえましょう。
・摩擦・絡まりを防ぐため洗濯ネットに入れる
・おしゃれ着洗いやドライコースなどやさしい設定で洗う
・中性またはおしゃれ着用洗剤を使う
・脱水は30秒~2分ほどの短時間で済ませる
丁寧に洗えば、洗濯機でも生地に負担をかけずに洗えます。
洗濯後はどう干す?正しい干し方と注意点
再生繊維でセルロースを使った衣類を洗ったら、干し方にも注意が必要です。
・直射日光は避け、風通しの良い場所で吊り干し
・肩幅に合うハンガーで型崩れを防ぐ
・伸びやすい服(ニットなど)は平干し
・乾燥機は避けて自然乾燥
慎重に干すことで、シワや型崩れを予防できます。
まとめ|再生繊維のセルロース服を選ぶことは環境にも人にもやさしい選択
再生繊維の中でもセルロースが原料の衣類は、やさしい肌触りと高い機能性を兼ね備えつつ、環境にも配慮している点で注目を集めています。
セルロース系再生繊維の代表的な生地であるレーヨン、キュプラ、リヨセルはそれぞれに異なる長所があり、用途や好みによって選べば楽しさが広がるでしょう。
洗濯やお手入れに少し注意が必要ですが、ポイントを押さえれば美しい状態を保ちながら長く着ることができます。
人にも環境にもやさしい選択肢の1つとして、セルロースを原料にしたアイテムを取り入れてみてはいかがでしょうか。