ファストファッションの何が問題?業界の抱える実情と解決に向けた動き方

「ファストファッションって問題が多いよね?」
「環境問題を考える上でファストファッションは悪だよね?」
環境問題の情報やsdgsへの取り組みが広がった昨今、〈ファストファッション=悪〉という構図はぬぐっても拭いきれません。
確かに、ファストファッションの大量生産と大量廃棄は、環境汚染や労働問題などさまざまな問題を生み出しています。しかし、一概に悪と表現するのはNG!まずは「ファストファッションの何が問題なのか」を整理して考えましょう。
今回は、ファストファッション業界が抱える社会問題と、大手アパレルの取り組みなどをチェックしていきます。
目次
ファストファッションの大きな4つの問題…向き合い方を考える
ファストファッションとは流行に対して早く商品を提供し、かつ安価な値段で販売されるのが特徴です。まずは、そのファストファッションにどのような問題があるのか整理していきましょう。
①法外の労働環境を加速させている
ファストファッションが破格で手に入るのは、実は法外な労働環境下で働かされている労働者がいるからです。ファストファッションが売れれば売れるほど、労働環境の悪化を導いてしまうというパラドックスがあります。
煌びやかな広告からは想像ができない部分ですが、忘れてはならないことです。売れればそれでいい、利益を出せればいいという意識を変える必要性があります。
② トレンドの早い循環とコピー商品の増加
ファストファッションのお店に行くと、毎週商品が入れ替わっていると言っても過言ではないほど、トレンドを追った商品が並びます。消費者からすると、いつお店に行っても新しい商品が並んでいるので、購買意欲を刺激することができます。
しかし、そのトレンドはハイブランドからきていることも多く、どこかで見たことがあるようなハイブランドのコピー商品も多くあるのが現状です。
③在庫の処分と古着輸入国が抱える悩み
商品が短いスパンで店頭に並ばなくなり、廃棄されているということでもあります。また、ファストファッションは見込み生産の体制をとるため、どうしても余剰生産になってしまい、そのゴミの廃棄数は深刻な社会問題を引き起こしています。
ゴミを廃棄する場所だけでなく、燃やす際には有害な物質が発生し、環境への負担が問題視されています。
また古着輸入国には大量の古着が集まります。悪臭や汚水による近隣河川の環境破壊、積み重なった衣類のゴミによる自然発火などが問題として挙げられている現状です。
④長く着ることができない
ファストファッションは安価であるが故に、素材も長く着られるものを使用できません。安価な合成繊維が用いられる傾向にあります。合成繊維にもメリットはあり、洗濯がしやすかったり機能性の高さなどは着る人に影響を与えているでしょう。
しかしながら、結果として長く着ることができず、またファストファッションに手を出すという循環が生まれています。
参考:borderless ・アパレルの大量廃棄を減らすには? 人や環境に配慮した服が当たり前の社会をつくるEnter the E
ファストファッションの問題を解決する方法とは?企業が取り組む意義
ファストファッションの問題と向き合うためにファストファッション業界は、どのような取り組みをしているのでしょうか。取り組みの事例をみてみましょう。
すぐには解決できない事情とは
ファストファッションに対して、すでに問題が提起されているのであれば「解決を急ぐべき」と考える方も少なくないでしょう。とはいえ、ファストファッションの問題には早期解決が難しいポイントがいくつかあります。
・一定の需要
・温暖化の影響から機能性の高い衣類が求められる
・自社タグなどの影響から輸出しづらい
・雇用問題(雇用を産み出している)
上記はあくまで一例ですが、購入する側、働く側、雇用する側それぞれにハードルを抱えているのが現状です。
ブランドごとの取り組みを重視する
大手ファストファッションのショップでは、店内に回収ボックスをおくようになりました。自店で購入した商品に限っていることもありますが、メーカーを問わず回収するケースもあります。
回収後は、寄付をしたり、リサイクル素材として再製品化したりなどされています。
各ファストファッションブランドが個々に「はじめやすい施策」からトライすることは悪いことではありません。利用する人や目につく人の関心度を上げるきっかけになるでしょう。
参考:ユニクロ「サスティナビリティレポート2021 環境負荷低減への取り組み」
長く着られるファッションと新しい価値づくり
ファストファッションと相対する1点ものを作り出すことも再注目されています。
スローファッションは、本当に自分の好きなもの、環境に優しい素材などにこだわって商品を選択する考え方です。 たとえば、古着には汚れや色褪せなど、1枚1枚違った風合いがありそれらを楽しむようなこと。
また、アップサイクルでまったく新しい価値を与える試みもあります。アップサイクルは、資源を再抽出するリサイクルとは異なり、もともとの素材を活かしていることが特徴です。
たとえば、古着をエコバッグにしたり、廃タイヤからサンダルを作ったりなどです。アイデア次第で資源を有効活用することができます。
国内の衣類を海外に輸出するという選択肢|必要な場所へ届けよう
では、国内で不良在庫となってしまったファストファッションは、海外では需要があるのでしょうか。不良在庫を抱えていると、労力もコストもかかって仕方がありません。処分の方法としての可能性をみてみましょう。
海外輸出で大量廃棄を防げる!?
アパレルの廃棄処分する予定だった不良在庫も、海外では需要があります。
ファストファッションメーカーとしては、不良在庫を処分するためのコストを削減できますし、再販することで利益になる可能性があるということです。
捨てるのではなく海外へ輸出することで、また誰かに着てもらえる、何かの役に立てることは社会問題解決のための第一歩になるはずです。
ただし、誰にどのように届けるかが重要です。国内から古着を輸出したとして、需要過多になってしまえば再びゴミとなってしまい悪影響を及ぼします。ですが、必要としている場所に見識のある事業者であれば正しく国内の古着を輸出することも可能でしょう。
参考:NIPPON 47 ・古着の最終集積地アフリカが抱える問題…古着産業の現状から考える私たちの行動
日本のファストファッションは需要があるの?
近年は世界的にも古着市場が急成長しているといわれています。とくに、東南アジアでは、日本の古着が人気で、古着マーケットではたくさんの取り引きがされています。
日本の製品が丈夫であることや、徹底した生産管理がされているので信頼があることがその理由です。
まとめ|ファストファッションがもたらす社会問題について
ファストファッションの浸透による社会問題が深刻化しています。大手アパレルメーカーでは、さまざまなファストファッションを取り巻く問題の解決に向けた取り組みがおこなわれています。しかし、これまでの生産体制をすぐに変えることは難しいですし、再生繊維の開発やリサイクルの技術もそう簡単に成功するものではありません。
ファストファッションの大量生産と大量廃棄の問題は、不良在庫を海外へ輸出することで解決する可能性もあります。日本の古着は海外で需要があるため、海外への販路拡大のチャンスにもなります。
ファストファッションの問題を整理し、自分たちにできることに少しずつ取り組んでいきましょう。