アパレル企業は在庫管理が難しいといわれています。季節や流行に売れるものが左右されるからです。

過剰在庫になりやすい服ですが、売れ残った商品を廃棄すると環境破壊につながり、企業のイメージが悪くなってしまう恐れも…。在庫を処分する方法としてリサイクルや海外に向けての販売を検討してみましょう。

服の環境汚染問題への取り組みは大がかりになる傾向がありますが、できることを知っていると取り組みやすくなります

小さなことからでも、服による環境問題に対して自社でできることを検討することが大切です。

服の生産・処分は環境汚染問題に…在庫管理・処分ででできること

近年アパレル企業では、服の生産だけでなく在庫の廃棄が問題となっています。余剰在庫の出やすいアパレル企業ですが、余った在庫はすぐに廃棄するのではなく、服が引き起こす環境汚染問題に対してできることを踏まえて検討していきましょう。

服に関する環境破壊の現状

国連貿易開発会議(UNCTAD)は、環境汚染産業の第2位にファッション業界をあげています

ファッション業界は毎年930億立方メートル大量の水を使用しており、約50万トンものマイクロファイバーを海洋に投棄しているのです。さらに、温室効果ガス排出量は合計12億トンのCO2に相当します。これは、国際航空業界と海運業界を足したものより多い排出量です。

ファッション業界のCO2排出量は増加傾向で、2030年には約20億8千万トンになると予測されています。

参考:環境省「SUSTAINABLE FASHION ファッションと環境」

服の在庫管理が難しい

アパレル業界は需要予測が困難なことや、定価で販売できる期間が短いなどの理由で、服の在庫管理は難しく、多くの企業で課題となっています。

売れ残った商品はセールやアウトレット専用店舗などで販売されていますが、売れ残っても販売できる受け皿があることが、過剰在庫の原因のひとつとなっているのでしょう。セールなどでも売れ残ってしまったアイテムは、処分されるのが一般的です。

余った商品は海外に輸出する方法もある

海外に服の在庫を輸出する方法としては、越境ECの利用がおすすめです。越境ECは、国境を越えて取引を行うことで、インターネットが利用できれば誰でもすぐに始められます。

スマホやPCがあれば何でもできる時代だからこそ、インターネットを活用して市場を広げていきましょう

服の環境破壊問題に取り組めばイメージアップ!すぐにできること

服の環境問題への取り組みは、イメージアップにもつながるため多くの企業が始めています。しかし、いざ取り組むとなると大がかりになり、時間とコストがかかることが多いです。そこで、服の在庫を抱えている企業が、環境汚染問題に対してすぐにできることを紹介します。

服をリサイクルしている企業に寄付する

服の環境問題が取り上げられることが多い近年、服のリサイクルを募集している企業は増加しています。売れ残ったからとすぐに処分するのではなく、寄付できる企業がないか検討することが大切です。

服をリサイクルに出すと認証をもらえる企業・団体があり、自社のイメージアップにもつながります。処分すると費用がかかりますが、リサイクルしている企業に渡すとコストを抑えられる点が魅力です。

在庫をリサイクルしてくれる企業に売る

服の過剰在庫で処分に困っている場合は、大量の在庫をリサイクル原材料として買い取ってくれる企業を検討しましょう。

余った在庫を廃棄する際、環境問題につながるのはもちろん廃棄費用もかかります。しかし、リサイクルしてくれる企業に売れば、廃棄費用がかからず逆に売上にすることが可能です。さらに、環境問題への取り組みとなることもメリットとなります。

受注販売でレアリティを高める

コラボ商品など受注販売にすると過剰な在庫を抱えずに販売できます。さらに、受注販売は特別感が強く、レアリティを高める効果もあるでしょう。

販売方法を工夫するだけで、在庫を抑え、服の環境問題の取り組みにつながります。

服が環境を破壊する問題に対してできることは?実例とともに紹介

ここまで紹介してきたのは、余った服の在庫を手放す手段です。しかし、服による環境問題に対して、企業ができることは処分だけではありません。

服が環境を破壊する問題に対して、自社ができることを考える際に実例を参考にしてみるのもおすすめです。在庫を活用して、新たな顧客を獲得するための企業の具体的な取り組みを、3つご紹介します。

期間限定の古着イベントを開催する

ユニクロでは2023年10月から「UNIQLO古着プロジェクト」が始動しました。2024年には、3月〜8月の期間限定で東京と福岡にポップアップストアが設置されています。回収した衣料に手を加えて、再び販売されるイベントです。

大規模なイベントではなくても、期間限定で店内に古着スペースを作るだけでも環境問題の取り組みのひとつとなります。

参考:UNIQLO公式サイト「プレスリリース 2024年03月19日」

服をアップサイクルして売る

アップサイクルは、廃棄予定の物を他のアイテムに生まれ変わらせ、付加価値を加えることです。

ファッションコミュニティーNewMakeでは、廃棄予定の商品を受け取りクリエイターが新たな価値を生み出すという、アップサイクルの活動を行っています。アップサイクルの商品は、世界で1つだけの商品となる場合が多いです。受注生産でレアリティを高めると、新たな顧客獲得につながるでしょう。

廃棄予定の物がある場合、簡単なアップサイクルから始めてみるのもおすすめです。

リサイクル素材で服を生産する

瀧定名古屋(株)が開発するRE:NEWOOLは、古着や裁断くずなどから羊毛を取り出しリサイクルウールを作り出しています。ほかにも、ペットボトルから服を作る方法や改修した衣類のポリエステルから新たな衣類を作る取り組みがあります。

すぐに始めるのはなかなか難しいかもしれませんが、長期的な目標として掲げ、リサイクル素材で服を生産している企業を見学に行ってみるのも良いでしょう。

まとめ|服による環境破壊を防ぐ!問題解決のためにできること

在庫管理が難しいといわれているアパレル企業では、服の在庫処分が環境破壊に大きな影響を及ぼしているのが現状です。

服による環境破壊問題を防ぐためにできることとして、リサイクルしてくれる企業への寄付や越境ECを利用して海外に向けての販売などがあげられます。他にも、受注販売を行うことで余剰在庫を減らせるだけでなく、商品のレアリティを高める方法もあります。

服の環境問題の取り組みは、大がかりになることが多いですが、できることから始めることが重要です。