アパレル企業から出る過剰な在庫が、行き場を失い、世界的にも大きな環境問題となっています。アパレルの大量生産・大量消費が行われる一方、服の廃棄量は日本だけで100万トン以上と言われているのです。

世界的な取り組みでアパレル在庫の廃棄を禁止する動きも出てきています。とはいっても、アパレル企業の中には、余剰在庫の処分に困っている企業も多いのではないでしょうか。この記事では、アパレル在庫の処分方法や実例をご紹介します。

自社の利益を守ったり、企業イメージをアップさせたりするために、在庫を活用する方法を知っておきましょう。

アパレルの在庫が環境問題に!量や安易な処分の注意点を解説

アパレル企業が抱える余剰在庫は、企業だけでなく環境にも大きな影響を及ぼしています。アパレルの在庫を安易に処分すると環境への影響も大きく、ブランドイメージを下げる恐れがあるため、注意が必要です。在庫の寄付や譲渡を避けた方が良い理由もご紹介します。

廃棄量は全体の64%に…

アパレル企業は、技術の発展により安価で大量の服を提供できるようになりました。消費者も安く、たくさんの服を手に入れられる、大量生産・大量消費の時代がやってきたのです。

環境省によると日本の衣類の供給量は81.9万と言われています。一方、そのうち廃棄される量は51.0万トンで全体の64.8%と半数以上も占めています。

リサイクルやリユースが行われることもありますが、衣類のほとんどが廃棄されているのが現状です。

参考:SDGs MAGAZIN「その洋服、本当に必要?年間約51.0万トンの洋服が廃棄に。大量生産・大量消費の背景からみる課題とは」

寄付の服も飽和状態

余剰在庫を寄付するのも1つの手段です。しかし、コストがかからない方法のため、寄付によって集まりすぎた衣類が世界中で飽和状態になっている側面もあります。

南米チリでは「服の墓場」と呼ばれている不法投棄された衣類の山が広がっており、大きな問題となっています。また、ウガンダでは地元の繊維産業の発展を妨げるとして、2023年に古着の輸入が禁止されました。寄付された服の行き先にも困ってしまう事態となっているのです。

譲渡や安売りはブランドイメージが下がる

余剰在庫が多いからといって、むやみに値段を下げたり、譲渡したりしてはブランドイメージが下がるため、おすすめできません。

何度も安売りをしてしまうと、消費者は欲しいものがあっても「すぐ安くなるから待とう」という気持ちが芽生えてきます。そうなると、定価で買ってもらえず、さらに商品が売れ残る悪循環にもなるのです。

企業イメージを保ちながらアパレルの在庫をうまく処分する方法

企業イメージを保ちながらアパレルの在庫を処分するには、余った商品をうまく活用する必要があります。ここでは自社でコストを抑えて取り組める、上手な在庫の処分方法を2つお伝えします。

自社のセールを活用する方法

余剰在庫を少しでも減らしたいなら、自社のセールを上手に活用しましょう。セールで在庫消化を狙うなら、ただ安売りするだけでなく、戦略が必要です。

例えば、単価の高い主力商品を値下げして、それに関連するアイテムを買ってもらえるようにする工夫をしましょう。まとめて買うとお得になるようなキャンペーンやセット販売などもおすすめです。

余り物感を出さない福袋の作り方

アパレルの在庫消化の定番は、福袋です。しかし、余り物感が出ている福袋は人気が出にくく売れ残ることもあります。在庫だけの福袋を作らずに、福袋限定アイテムを入れたり、割引クーポンを入れたりする工夫が必要です。

福袋の中身でコーディネートができるようにアイテムを揃えて、開けたらすぐに着られるようにすると、次回以降も購入したいと思ってもらえるでしょう。

セール・福袋以外のアパレルの在庫を処分する斬新な3つの方法

セールや福袋以外で、継続的に処分する方法を模索する企業も多いのではないでしょうか。定期的に在庫消化ができるシステムがあると、余剰在庫を抱え込まずに済みます。セールや福袋以外で、アパレル企業の在庫を処分する方法を3つご紹介します。

①アウトレットショップを展開する

アウトレットショップを展開すれば、在庫やサンプル品、B級品などを継続的に処分できます。SALEとは違い、ブレンド価値を下げずに処分できる点も大きなメリットです。

また、アウトレットショップを出店すると、普段とは違うお客様に知ってもらえるきっかけにもなります。新たな顧客獲得のチャンスとなるでしょう。

②オフプライスストアに出す

オフプライスストアとはブランドや企業が抱える余剰在庫を買い取り、安価に販売する小売店のことです。ブランド単独で行うアウトレットとは違い、さまざまなブランドから仕入れて販売します。自社で新たに店を構えたり、販路を拡大しなくて良いのがメリットです。

米国では大手のオフプライスストアがあるほど定番の小売店ですが、近年、日本でも続々と登場していますので、参入を考えてみてはいかがでしょうか。

③ECサイトで海外へ輸出する

ECサイトを使うと日本だけでなく、海外まで販売規模を拡大できます。日本製品は品質が良く、海外でも人気が高いため新しい販売経路としておすすめです。

大手越境ECである「Amazon」や「ebay」の他に「メルカリshops」でも海外発送ができます。ゆくゆくは海外進出も考えている場合は、ぜひ利用してみましょう。

まとめ|アパレルの在庫が引き起こす環境問題をなくすための処分方法

アパレル業界の余剰在庫は、企業レベルの問題でなく、世界レベルの課題となっています。処分方法を誤ると、ブランドイメージが落ちるだけでなく、環境破壊を進めてしまう恐れもあります。

アパレルの在庫の処分に悩んでいる方は、まずはセールや福袋を活用して売ってみましょう。アウトレットショップや海外輸出も視野に入れておくと、余剰在庫を利益につなげて新たな販路を拡大するチャンスとなります。

自社でできそうなところから取り組んで、過剰在庫の問題を解消しましょう