サスティナブルとは「持続可能な」という意味で、昨今は多くの場面で見られるようになりました。

着られない服をできるだけ再利用したり、服作成時の環境負荷を減らす取り組みはサスティナブルファッションとも言われアパレルや衣類を取り扱う企業にとっては欠かせないワードでしょう。

じっさい、アパレルの在庫を古着として活用する手段も出てきています。今回はアパレルの抱える在庫を古着として循環させる選択について解説します。サスティナブルに活用するべき理由や方法を知っておくと、環境に優しい企業になるとともに、利益にも直結するでしょう。

古着がサスティナブルファッションとして注目されている3つの理由

衣類は生産するだけでなく廃棄までの過程にさまざまな人・環境が関わり合っています。サスティナブルファッションとは生産・着る・廃棄、これらの全ての過程が将来にわたり持続可能であることを目指した考え方です。生態系を含む地球環境や関わる人・社会に配慮した取り組みのことを言います。注目される理由を整理しましょう。

①衣類は製造過程で資源が大量に使われる

衣類を製造するために、天然繊維(コットン)や合成繊維を使います。天然繊維は、栽培時に水を消費したり、化学肥料による土壌汚染などが起こります。合成繊維は石油資源を使うため、二酸化炭素の排出原因となります。

一着の衣類の原料調達から製造段階までにかかる環境負荷は以下の通りです。

・二酸化炭素排出量…約25.5kg
・水の消費量…約2300L

1990年と比べると、服の価格は安くなっており、安い衣服が大量に出回る時代が続きました。服を作るとかなりの環境負荷となるため、古着を活用するのがサスティナブルな方法と考えられています。大量に新しい服を作らず、今ある服をできるだけ長く着ることが求められています。

②流行は繰り返される

服の流行が過ぎ去ると、流行遅れの服は売れなくなり、企業にとっては痛手となります。すぐに処分したくなりますが、流行は繰り返されるため、今余っている服が別の場面・世代で流行る可能性があります。また、世界中を見渡すと今日本で流行っていなくても、他の地域では流行しているかもしれません。

アパレル在庫を捨ててしまわずに、別の場所で古着として有効活用できるようにすると、利益にも繋がります。

③古着はリペアで新たな価値が生まれる

流行が終わってしまった服でも、古着として市場に出回るとリペアされて新たな価値が生まれます。少しほつれてしまっていても、リペアすると唯一無二のデザインになったり、リペア自体が古着らしさを引き出します。

例えば、襟元のデザインが素敵でも、丈が流行遅れのワンピース。丈を調整すると、服自体の良さを生かしつつ、流行に合った服へと変身させられます。

【参考:環境省「サスティナブルファッション」

在庫を処分する方法は?古着をサスティナブルに利用する方法も

せっかく仕入れた服を処分するのは利益に繋がらず、環境への負担も大きいです。一般的な在庫の処分方法と古着としてサスティナブルに有効活用する方法をご紹介します。

セールやアウトレットで売り切る

流行が終わりそうな場合や季節が移る前は、服をセール価格やアウトレット価格で売り出す方法が一般的です。最近では、売り残しをできるだけ減らすために早くからセールを始めるアパレル業者もあります。

セールでは利益率は下がるものの利益がマイナスになるのは避けられます。他社よりも早くセールを始めると集客にもつながるため、売り残しを減らしたい場合はセールやアウトレットを始める方法が無難でしょう。

積極的に売り切るための施策を行うためにも、前年やそれまでの数字と照らし合わせて施策のタイミングも考えるべきです。

ブランド品はゴミとして処分する?

ブランド品は値段を下げるのにも限界がありますし、ブランド毀損の可能性がでてくるため買取などを利用しにくいです。そのため、ブランド品は処分されることが多いです。

また、在庫をとっておいたり、セールなどを行うと時間や手間がかかります。ゴミとして処分すると利益にはなりませんが、その後の経営をしていく上では致し方ない部分もあるでしょう

ですが、「ゴミとして処分する」という選択をする前に、別の選択肢が生まれるような準備を行うことはアパレル・衣類業界にいる人々の義務と言っても過言ではないです。

買取専門業者に頼む

アパレル業者の在庫を買い取る専門の業者がいます。余っている服を古着として再利用できるため、サスティナブルな方法です。服を処分するのにもコストがかかるので、少しでも入荷コストを回収したい場合には利用してみましょう。ブランド品はタグを切ってからの流通をしている業者もあるので、ブランド毀損が心配な場合でも安心です。

海外に輸出する

在庫を古着としてサスティナブルに活用するには、海外に輸出する方法もあります。海外進出していないブランドの場合、海外輸出してしまえばブランド価値を下げる心配がなくなります。

海外への輸出先としては、タイ、アメリカ、中国などがあります。アパレル在庫を海外流通させるには、手続きを踏まなければならず、国内買取より時間がかかります。しかし、販路を確立させると、国内買取にはない利益が生まれる可能性が高いです。

アパレルの在庫は古着として輸出するという選択肢も抱えておきましょう。

アパレルの在庫を古着として…!国内古着の海外輸出という選択肢

アパレル在庫の処分方法として、海外輸出を行う場合、どの国に輸出するかを迷う方が多いです。輸出先としてタイがオススメの理由や輸出方法を知っておきましょう。

タイは古着が集まる場所

世界各国から出る古着はタイやパキスタンなどの東南アジアに集まります。一口に古着と言っても、ブランド品やそうではないもの、破損していて販売できないウエスなどが混ざっています。市場に出す前の仕分けにはマンパワーと広い場所が必要です。

先進国では人件費が高くつくため、古着の仕分けは行われず、タイなどの人件費が安い国に古着が運ばれることが多いのです。また、タイには古着を蓄えておく巨大な倉庫がたくさんあるため、在庫をたくさん抱えられるという特徴があります。

販路の拡大と資源の再利用につながる

タイにアパレル在庫を輸出すると販路が拡大できるチャンスが増えます。タイでは日本のバイヤーだけでなく、古着ビジネスが盛んなアフリカや東南アジアの国からもバイヤーが買い付けに来ます。そのため、アパレルの質が良ければ取引先や出品先が増える可能性があります。

日本のアパレルはキレイで作りが丈夫なので、約99%が古着として再利用されます。既にある服を再利用できれば、衣類を新たに作る時の資源が消費されず、環境に優しいです。処分品を古着としてサスティナブルに活用している事実は企業のアピールポイントにもなります。

タイへ輸出するなら方法が大事

タイへの輸出方法としては、大きく分けて海上輸送と航空輸送があります。海上輸送は輸送費用は安いですが、タイ到着までに1ヶ月ほどかかります。航空輸送は費用はかかりますが、5日程で到着します。

また、輸出時は税関にインボイスを提出する必要があります。インボイスは貨物の明細の書類で、品名、数量、単価、金額、原産地などを記載します。初めての場合は書類を作成するのも時間がかかりますので、インボイス作成を代行してくれる物流業者を利用するのがオススメです。

まとめ|アパレルの在庫を古着として輸出

アパレルの在庫を古着としてサスティナブルに活用するには、国内の買取業者に頼んだり、海外輸出する方法があります。中でも海外輸出はブランド価値を損ねにくく、販路を拡大できる可能性が高まります。

しかしながら、アパレルの在庫を古着として輸出するには、海上輸送か航空輸送を選び、インボイスの作成をしなければいけません。また、自社製品のタグの扱いや、輸出の流れなど事前に確立すべき内容は多いでしょう。

しっかりと見識のある事業者に依頼をおこない、国内古着の輸出に取り組んでいきましょう。

参考:NIPPON 47 ・アパレル業界の売れ残りをどう処分する!? 廃棄処分の問題と国内から輸出するという選択